東京医科大学病院 渡航者医療センター
・中国で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの流行が発生
4月1日に世界保健機関(WHO)は中国の上海などで鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに感染した患者が3人発生したことを報告しました(WHO Global
Alert and Response 2013-4-1)。その後、4月25 日までに中国中部などで患者数は109人に達し、うち22人が死亡しています(WHO Global
Alert and Response 2013-4-25)。4月24日には台湾でも患者が確認されました(国立感染症研究所・感染症情報センター 2013-4-24)。ほとんどの患者は市場などの家禽から感染したものと推定されていますが、感染経路については現在調査中です。WHOは持続的なヒトからヒトへの感染はおきていないと発表していますが、A(H7N9)ウイルスの流行については経過を注意深く監視する必要があります。なお、現時点で中国に滞在する渡航者は下記の点に注意してください。
1.生きた家禽のいる市場などに立ち入らない
2.鶏肉は良く加熱して食べる
3.手洗いやウガイを励行する
4.熱や呼吸器症状が出現したら早めに医療機関を受診する
・新型コロナウイルスの流行
昨年より中東を中心に流行している新型コロナウイルスの患者は、4月末までに17人になりました(WHO Global
Alert and Response 2013-4-24)。このうち12人が死亡しています。国別の患者発生数はサウジアラビア10人、ヨルダン2人、カタール2人、英国2人、UAE1人となっています。なお、4月になってからは新たな患者発生はみられていません。
このウイルスの解析結果が医学雑誌に発表されました(Journal of Infectious Disease電子版 2013-3-26)。それによれば、新型コロナウイルスはSARSウイルスに比べてより多くのヒト細胞に感染するため、患者は重症化するようです。その一方で、ヒトへの感染性は現時点ではまだ低いとのことでした。新型コロナウイルスの流行についても引き続き監視を続けていく必要があります。
・アジア、南太平洋でのデング熱の流行状況
東南アジアではシンガポールとラオスでデング熱の患者数が増加しています(WHO Western
Pacific Region 2013-4-17)。シンガポールでは1月から4月までに4700人以上の患者が発生していますが、これは同国の昨年1年間の患者数(4600人)に匹敵するものです(Fit For Travel 2013-4-22)。
南太平洋でも今年はデング熱の患者数が増加しており、ソロモン諸島で2700人、ニューカレドニアで6900人の患者が確認されています(WHO Western
Pacific Region 2013-4-17)。流行地域では蚊に刺されないように注意をしてください。
・インドネシア・バリ島の狂犬病は鎮静化
インドネシアのバリ島では2010年から狂犬病の患者が多発していましたが、2012年4月以来、新たな患者発生はみられていません(ProMED 2013-3-28)。2010年の患者数は82人で、2011年は24人、2012年は8人と年々減少しています。ただし、動物の間での感染は未だに続いている可能性があり、今後も狂犬病への注意は必要です。
・英国での麻疹の流行
英国の南ウエールズで麻疹の流行が発生しており、4月下旬までに800人以上の患者が確認されました(ProMED 2013-4-21)。患者の発生はSwanseaでとくに多くなっています。麻疹は空気感染する疾患であり、日本からの渡航者が滞在中に感染する可能性もあります。英国に滞在予定の渡航者は麻疹ワクチンの接種を検討してください。
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