東京医科大学病院 渡航者医療センター
・英国で新型コロナウイルスの患者が発生
2月に英国内で新型コロナウイルスの患者が3人確認されました(WHO Global Alert and Response 2013-2-11, 13, 16, 21)。最初の患者は60歳の男性で、サウジアラビアとパキスタンを訪問後の1月下旬に肺炎をおこしています。この男性は現在も治療中です。さらに、この男性の家族2人が発病しました。両名とも最近の海外渡航歴はなく、最初の患者から感染した模様です。このうち1人は比較的軽い症状で回復しましたが、もう1人は死亡しました。死亡した患者には免疫系の基礎疾患があったと報告されています。
新型コロナウイルスは2012年4月頃より中東を中心に流行しており、今回の英国での患者を含めて2月下旬までに13人の患者(7人死亡)が確認されています。患者の発生国はサウジアラビア(6人)、カタール(2人)、ヨルダン(2人)、英国(3人)の4か国です。今回の英国での患者のうち、最初の患者は中東訪問後に発病しており、中東滞在中に感染したものと推定されています。しかし、残りの2人は英国内で最初の患者から直接感染した可能性が大です。また、1人の患者は比較的軽い症状で回復していますが、この事実はウイルスが広い範囲に拡大する可能性を示唆しています。患者発生後に英国では接触者のスクリーニング検査が行われていますが、今のところ3人の患者以外は確認されていません。
・カンボジアで鳥インフルエンザの患者が増加
1月よりカンボジアで鳥インフルエンザ(H5N1型)の患者が8人発生し、うち7人が死亡しました(WHO Influzenza-Human animal interface 2013-2-15, WHO西太平洋事務局 2013-2-21)。患者の大多数は小児で、発生地域はプノンペン周辺など広い範囲に及んでいます。また、ほとんどの患者は発病前に病鳥との接触があったことが確認されています。カンボジアでは今回の事例を含めて今までに29人の患者(26人死亡)が確認されていますが、今年になり患者数が増加している原因は不明です。なお、中国でも南部の貴州省で2月に鳥インフルエンザ(H5N1型)患者が2人発生しており、両名とも死亡しました(WHO Influzenza-Human animal interface 2013-2-15)。いずれも20歳以上の成人の患者です。
カンボジア、中国、エジプトでは今年も鳥インフルエンザの患者発生が続いていますが、こうした流行国に滞在中は、生きた家禽に接触しないように注意することが大切です。
・バングラディッシュでのニパウイルス感染症
バングラディッシュではニパウイルスに感染した患者が2001年以来、179人発生しており、140人が死亡しました(外務省海外安全センター 2013-2-15)。昨年末からは14人の患者が確認されており、首都のダッカで8歳の子ども(死亡)と父親が発症した事例も報告されています(Pro MED 2013-1-25)。
ニパウイルスは1999年に発見された新種のウイルスで、ヒトに感染すると発熱や脳炎をおこし、高い致死率になります。このウイルスはコウモリが保有しており、コウモリの排泄物で汚染された果実を経口摂取して感染がおきます。ナツメヤシのジュースで感染するケースが多く、現地滞在中は生のジュースは飲まないようにしてください。
・スペインでのリーシュマニア症
スペインでは2009年からリーシュマニア症の患者が増加しており、2012年には150人の患者が確認されました(Pro MED 2013-2-17)。とくに、首都マドリッド南部のFuenlabradaで患者数が増えています。リーシュマニア症はハエの一種であるサシチョウバエが媒介する感染症で、皮膚に潰瘍をつくる皮膚型と、内臓に病変をおこす内臓型があります。内蔵型は発熱や肝障害など慢性の症状をおこし、治療しないと死亡することもあります。スペインでは皮膚型、内蔵型のどちらも増加しているとのことです。この病気を媒介するサシチョウバエは夜間に吸血する習性があり、同国に滞在中は皮膚に昆虫忌避剤を塗るなどの予防措置をとるようにしてください。
- 閲覧()